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3.3 Alien Technology Corporation(エイリアンテクノロジー)
日時:5月27日(火)9:00~11:00
場所:Alien Technology本社工場セミナールーム
   (カリフォルニア州モルガンヒル)
説明担当:Thomas M. Pounds氏(Business Development & Marketing Vice President)
  Mark G. McDonard氏(Director)

3.3.1 はじめに
 シリコンバレーに近いカリフォルニア州モルガンヒルに本社を構えるエイリアンテクノロジー社(Alien Technology Corporation)は、カリフォルニア大学で開発されたFSA(Fluidic Self -Assembly)技術を応用してディスプレイを開発するベンチャー企業として、1994年に創設されました。現在、元半導体ベンチャーの社長のもと、約100名の従業員を有し、ベンチャー・キャピタルの他、ディスプレイ関係およびRFID関連での投資を集めています。日本の東レインターナショナルもエイリアンテクノロジー社に投資しており、2003年3月から同社は、エイリアンの国内総代理店となっています。
 エイリアンテクノロジー社は、2000年よりFSA技術を応用したRFIDタグの開発を開始し、RFIDベンチャー企業のWave-ID社を買収して、その後現在に至るまでRFID用ICの設計、タグ、リーダ、アンテナ等の設計・開発を行っています。
 2001年11月には、今回訪問した生産工場棟を持つ新本社が完成しています。

パウンズ氏による説明
今回は、Business Development & Marketing部門の副社長であるパウンズ氏(Thomas M. Pounds)氏より、エイリアンテクノロジー社の概要とコア技術であるFSAを応用したRFIDタグの作成工程、コスト削減等の戦略と製品の優位性等についてのお話を伺いました。した。

 また、パウンズ氏と同部門のディレクタであるマクドナルド(Mark G. McDonard)氏により、2.45GHz帯と915MHz帯のRFIDタグを用いたマーケットレジのデモンストレーションと、広範な通信距離を持つアクティブタイプ(電池内蔵)のRFIDタグを用いたデモンストレーションが行われました。
さらにFSAを用いたRFIDタグの第二世代の生産ラインも見学させて頂きました。

3.3.2 RFIDタグの製造コスト削減のための取り組み
 エイリアンテクノロジー社は、製造プロセスの各段階へのFSAなどの革新技術の導入により、RFIDタグの製造コストを従来の工法の1/4程度までに圧縮することに成功しました。
RFIDタグの製造コスト削減のためには、まず製造コストの半分以上を占めるICチップの製造コスト削減が不可欠となります。そのためには、まずICチップ自体を極小化することが考えられますが、極小化したICチップは、極小であるがゆえに取扱いが困難となるため、大量のチップを高速に処理するための工夫が必要となってくるのです。
 エイリアンテクノロジー社は、この問題をFSA技術を用いて克服しました。FSAプロセスでは、約400ミクロン角程度の極小ICチップ(ナノブロックIC)を大量に切り出し、それを水中でフィルム基盤に一列に並んだくぼみにひとつずつ振り込み、そのくぼみをカバーフィルムで覆って両端に電極をスクリーン印刷することで、ICチップを中心においた傷テープのような形状の「ストラップ」が一列に並んだテープ(「ストラップテープ」)を作り出します。
サンプル用のアンプル瓶に入ったナノブロックIC ストラップテープの素材となるフィルム ナノブロックICが振り込まれる小さな穴がみえる

「ストラップテープ」
この「ストラップ」は、さまざまな形状のアンテナと接合(アタッチ)させ、タグに加工することができます。実際の製造プロセスでは、「ストラップテープ」をストラップ/アンテナ高速接合装置などにかけることで、「ストラップ」とアンテナという部品の組み合わせから、高速に大量のタグを製造することができるのです。です。


表 RFIDタグ製造プロセスの各工程におけるコスト
(13.56MHz帯リードオンリ型RFIDタグの場合)

プロセス(製造工程) 現状(コスト) エイリアンテクノロジー社(コスト)
ICチップ ICサイズ・ウエハーダイシング(¢0.12) 350μmナノブロックIC/FSA(¢0.01以下)
アンテナ(Antenna) 銅箔エッチング(¢0.04) 印刷アンテナ(¢0.01)
実装(Attach)工程 フィリップチップボンディング(¢0.03) ロール/ロールプロセス(¢0.01以下)
新しいmfgプロセス
タグ組立て工程
(Package inlet)
タグ加工(¢0.03) パッケージ化/タグID書込(¢0.01以下)
と同時のテスト
コスト計 0.22セント 0.05セント以下

 ここで注意しなければならないことは、ICチップ自体を極小化していくことは、RFIDタグの製造コストを削減することになる反面、リードオンリーなどといったIC機能の簡略化や、データの読み書きの容量(メモリ容量)の制限(64-96ビット、Auto-IDセンタのクラス1標準規格)が必要になってくるということです。
 コストを下げるためにはこうした機能上の制約が不可避となるため、コストと機能のバランスにもとづいて、用途に応じたRFIDタグの仕様の絞り込みが必要となってきます。

3.3.3 標準化への取り組み
エイリアンテクノロジー社は、現在のところ、戦略的にAuto-IDセンタのクラス1に準拠したRFIDタグを製造しています。

3.3.4 製品について
主な製品は、ローコストでプログラム可能な2.45GHz帯、915MHz帯に共通のICチップを利用したRFIDタグ(現在、FSAプロセス・ラインで数十万個/月の生産)と、2.45GHz帯および915MHz帯用のリーダ/ライター(内部プログラムの変更により、どちらかの周波数帯に変更が可能。百~数百個/月)となっています。

Auto-IDセンタ クラス1 EPCタグ 裏面の「ストラップ」とアンテナの接合部

3.3.5 書籍に向く製品
ファイバ・タグ(915MHz,2.45GHz帯)
 エイリアンテクノロジー社によると、現在プロトタイプとして製作している、ファイバ・タグがよいのではないかということでした。
 このタグは、現在では数10~20セントぐらいのコストになりますが、近い将来5セントぐらいでも、利益を出せるようになるとのことです(タグのパッケージ無しなら、現在でも5~10セントぐらい)。
 仕様は、Auto-IDセンタのクラス1に準拠した他のRFIDタグと同じリードオンリ型で、プログラム書込みが1回できるものです。読み書き可能にもできるようですが(読み、書きそれぞれのEPROMを持つ)、1~2セント以上のコスト高となるようです。       

3.3.6 今後の展開
 エイリアンテクノロジーでは、2.45GHz帯、915MHz帯に共通のICチップを利用したRFIDタグについては、今年の末までに、100万個/月、来年の末までには1億個/月の生産を目指す予定だそうです(FSAプロセスの1ラインの追加により、年間100億個の増産が可能。また準備が進められている第三世代FSAはよりシンプルな構成となり、第二世代の10倍の生産量となります)。

3.3.7 デモンストレーション
(1)2.45GHz帯と915MHz帯のRFIDタグを用いたマーケットレジのデモンストレーション
まず複数のリーダを設置したテーブルが用意され、そこにそれぞれRFIDタグを貼付した複数の商品が入ったマーケットのカゴが置かれました。するとリーダが同時にそれら複数のタグの情報を読み取り、リーダに連動したPCに導入されたソフトウェアにより、ディスプレイ(プロジェクタ)上にその商品の写真が次々と表示されました(同時に読取った商品(タグ)の数は9個程度)。
RFIDタグを貼付した商品の入ったカゴを、リーダがスキャンする PCのディスプレイに、商品の内容が表示される

(2)アクティブタイプのRFIDタグを用いたデモンストレーション
アクティブタグ
このデモでは、バッテリ内臓の2.45GHz/915MHz RFIDタグを装着したブラックボックスが窓に設置され、窓付近の温度が付属の温度計によって測定されています。温度情報は、ブラックボックスのタグに書き込まれますが、20メートルほど離して設置されているリーダによって読取られます。その結果はPCディスプレイに刻々と表示されます。
同タグとリーダの組み合わせでは、200m×200mのエリアでの通信が可能だそうです。
こうしたシステムは、資産管理、SCM、コンテナの開閉等のセキュリティ・チェック、機械モニタリング等への利用が検討されています。
このタグの単価は現在のところ$15ぐらいだそうです(年50%ぐらいの割合でコスト減を図っているそうです)。
また内蔵の電池は4~7年持続し、高出力ではあるが、このタグに関しては、利用にあたっての健康上の規制(FCCなど)はないとのことでした。

3.3.8 質疑応答
Q: 同時読取の程度はどれぐらいか?
A: 300~400個/秒が可能であるが、通常は100~200個/秒の実用利用の範囲で十分なのではないか。これ以上の同時読取り能力を持たせるのは、コストとエンジニアリングとのトレードオフだ。

Q: 読み書きのメモリ容量は増やしていく予定か?
Q: リードオンリー主体では、バーコードとあまり変わらないのではないか?
A: これらの問題も、やはりコストとエンジニアリングとのトレードオフの関係にあり、どのような目的で、どのように使いたいかで、タグの仕様が決まってくるだろう。コストを重視するなら、小さなメモリ容量のリードオンリー型にするべきだ。技術的には大きなメモリ容量で、読み書きができるタグも実現可能だ。


エイリアンテクノロジー社の視察を終えて
 
エイリアンテクノロジー社のマスコットと「ストラップ」の模型 紙面印刷アンテナサンプル(915MHz)

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